1698 14冊目 『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

2020年50冊読破目標の14冊目です。


伊藤亜紗さんの『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社 2015)読破です。


伊藤さんが視覚障害を持つ5人の方と直接、継続的に関わりを持つ中で、また、会話ややりとりをする中で、体験したことを分析しながら書かれています。


中には、私も無意識に体験していることもありました。例えば、視覚が使えない方は、他の感覚、聴覚や嗅覚、触覚、味覚を使って世界を捉えることを行っていますが、目が見える私も意識していないだけで、無意識的にそれを行なっていることはあります。ただ、それはあくまで視覚情報から生まれる興味が引き起こす行動だったり、情報に付加価値や体験という意味を与えるために行っていることでもあります。


見るために行っていることではありませんでした。しかし、この本を読んで、たしかに聞くことで見えることはあるし、嗅ぐことで見えることはあると思えました。それはものすごく理解できたことですし、そうやって視覚障害の方(全員がそうではないのでしょうが)世界を見ているんだなと、その見方を面白いと思えるようになりました。


面白いという表現を使うと、視覚障害を持っている方に失礼だと思われるかもしれませんが、それは、目で見ている私が行っていなかった世界の捉え方、見方をしているということでの面白さです。この意味で、私の方が、もしかしたら世界を捉える力が弱いのかもしれないなと思えるような刺激をもらえました。


視覚から得られる情報は五感から得られる情報の8〜9割を占めると言われています。その情報に頼ってしまうために、見えているもの、見えている世界を豊かに捉えることができていなかったのかもしれません。


そういう意味で、伊藤さんと、この本の中に出てきた5人の視覚障害者の方の世界の見方、捉え方は、私のそれをより豊かにしてくれ、広げ、深める触媒になってくれたと思います。


読んでいて面白いなと思いました。

数年前に買って、ずっと本棚に置いていたままでした。読もうという気になってよかったです。


久しぶりの新書でしたが、読みながら頭を使いました。小説とは違う頭の使い方をします。何度も辞書を引き、同じ文を何度も読んで理解しました。とても疲れましたが、脳に良い刺激が起こりました。